健康体育~「脳の可塑性」を生かした運動遊び⑦
「脳の可塑性を生かした運動遊び」⑦
「限界を超える子どもたち」(アナット・バニエル著)から子ども自身の力を引き出すための9つの大事なことの7つ目~「学びのスイッチ」
「学びのスイッチ」と言っても、脳の中に実際のスイッチがある訳ではありません笑。似た言葉に○○○○式学育法の「やる気のスイッチ」というのがありますが…、いずれにしても子ども達がやる気になり学びのモードになる時の条件の例えです。
「学びのスイッチ」をオンにするとは、脳が本来の設計どおり学べる状態にあることであり、スイッチが入ると(オンになると)、注意力が高まり、好奇心がわき、それまでわからなかったことやできなかったことを把握する(理解する)ようになります。(「限界を超える子どもたち」(アナット・バニエル著)p190)本来の脳の働きである学びモードにはオンとオフがあるということですね。
それじゃあ、どういう時に「学びのスイッチ」がオンになったりオフになったりするのでしょうか?
「学びのスイッチ」がオンになるためには、一定レベルの「覚醒」が必要だということで、覚醒というと悟りとか何か難しい感じがしますが、決して修行をして悟りを開く必要はなく、覚醒の鍵は「感情」にあります。(前掲書、p197)
感情には大きく分けて「快と不快」の2種類あります。「心地よい、面白い、楽しい、気持ち良い、美味しい、大好き等」の快と「怖い、不安だ、痛い、心配だ、気持ち悪い、悲しい、苦しい等」の不快です。
人間は現実やイメージに対して感情が動いた時に、そのイメージが潜在意識に書き込まれます。潜在意識に書き込まれたものの積み重ねが「セルフイメージ」と呼ばれているものです。セルフイメージとは「自分のことをどう感じているか、捉えているかというイメージ」です。人はセルフイメージに従って考え行動します。
アナット・バニエルは、快の感情が湧き上がってきた時に、学びのモードがオンになると言っています。そうではない時はオフであるということですが、実際の心の仕組みから厳密にいうと、不快の感情が湧き起こった時に、そのイメージも学習(負の学習)されてしまいます。オフの時、つまり学習されない時とは、感情が動かない(興味関心が湧かない、どうでもいい)時です。
「学びのスイッチ」がオンになり学習モードの時(※すなわち、快の感情の時)、ほぼすべての働きかけが、その子の発達を促しますが、オフの時は、何をしても変化はほとんど起こりません。(前掲書、p197)
以前の私は、指導の時、やらない子にもなんとかやらせようとした時期がありましたが、最近は促しはしますが、それ以上はプッシュせず、本人のやる気や興味が出てくるのを待つようにしています。スイッチが入っていない(快の感情が沸き上がっていない)子にプッシュするというのは、バッテリー切れの車を叩いて無理やり動かそうとしているようなもので、ヘタをするとマイナスの学習(運動が嫌い等)をさせてしまいますから。
子どもの「学びのスイッチ」をオンにするには、自分(大人)の「学びのスイッチ」をオン(快の感情)にしておかないといけませんね。
限界を超える子どもたち
脳・身体・障害への新たなアプローチ
アナット・バニエル 著伊藤夏子 訳瀬戸典子 訳
出版社: 太郎次郎社エディタス
健康体操講師 北洞誠一先生より
ご投稿いただきました