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2025-09-30

2025年度 10月園長だより

「ただわけもなく受ける恵み」

毎朝、私は犬の散歩に出かけます。最近は空気が少しずつ涼しくなり、静かな薄暗い道を老犬と一緒に歩く時間は心を落ち着かせてくれる大切なひとときです。散歩の途中、大きなくぬぎの木の下を通りかかると、「こつん」 「かさ」「とん ころろ…」と音を立ててどんぐりが落ちてきます。足もとには、ぴかぴかに光った丸いどんぐりがいくつも転がっていて、私は思わず嬉しくなって立ち止まり、あちらこちら探し回っては拾ってしまいます。もちろん木は私を喜ばせようとして実を落としているわけではありません。ただ自然の営みを静かに続けているだけです。けれども、その「わけもなく受ける恵み」が、私の心を不思議と満たしてくれるのです。何かを頑張ったからでもなく、ただそこにいるだけで受け取れる恵み―それはとても大切なことを示しているように思えます。

人間の体にも、不思議で神秘的な営みがあります。私はこの夏、膝の古傷を治すために手術を受けました。その際、損傷した靭帯を自分の別の靭帯を用いて再建するという方法を聞き、大変驚かされました。まさに人間の体は再生する力をもっているのだと実感した瞬間でした。考えてみれば当然のことかもしれませんが、私はそこに強い wonder を覚えました。薬も処方されましたが、それはあくまでも補助的な役割にすぎず、結局は自分自身の体が本来の力を発揮して治っていくのだということを改めて感じました。今では手術の傷口もすっかり塞がり、生命のもつ力の偉大さを身をもって体験しています。
園庭でも、こども達は日々その生命の力を輝かせています。背よりも高い場所にとまるトンボを一心に追いかけ、やっと捕まえた瞬間に見せるキラキラとした目の輝き。花を摘んで色水遊びを楽しむ子。丸太や竹を組んで夢中で遊ぶ子。バッタを追いかけ、何度も挑戦を重ねる子。その一つひとつの姿の背後には、虫や植物をはじめとする自然の恵みがあり、そこには wonder に満ちた営みがあります。その営みこそが、こども達を育み、成長へと導いているのだと気づかされます。

こどもの成長を目の当たりにすると私たちは嬉しくなります。そしてありとあらゆる賛辞の言葉やエールを送りたくなります。それ自体は悪いことではありませんが、こどもは褒められるために成長するのではなく、他者からの評価のためだけに伸びるのでもありません。こどもは「自分の内側からあふれる生命の力で成長する」のです。だからこそ大人は、外側から形を決めつけるのではなく、こどもが世界と関わろうとする力を信じ、見守ることが大切だと思います。津守眞先生が著書『保育者の地平』の中で語られている「今日、こどもが必要とすることに私共は答えたい。その逆ではない」という言葉は、まさにその姿勢を表しているといえるでしょう。こどもを理解するためには、古い考えにしがみつかず、ただわけもなく愛する「情」と、自分を新たにする「知」を持ち続けることが求められると、津守先生は続けて語られます。それは決して容易なことではありませんが、こどもを見守る、保護者・保育者の私たちにとって欠かせない心構えであると思います。

散歩の途中、ふと、くぬぎの木を見上げると、朝焼けの空が高いことに気づきました。季節の移ろいに合わせて空は高くなり、木々は色づき、虫の声も少しずつ変わっていきます。こども達の成長もまた、自然の営みと同じように、ゆるやかでありながら確かで、美しく尊いものです。私たち大人もその変化を静かに受け止めながら、ともに新しく生まれ変わっていくような気持ちで、歩んでいきたいと思います。(園長)

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職員室


教材が置いてあります。

りす


3歳児クラスのお部屋。

フリールーム


預かり保育、礼拝、健康体操など多目的に使います。

うさぎ


3歳児クラスのお部屋。

お庭


5月にはグミの実が、夏から秋にかけて野イチゴが採れます。

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園長室


園長がお仕事をしています。

こひつじ


地域の親子が遊べるお部屋です。

ぱんだ


4・5歳児の縦割りクラスです。

こどもトイレ


壁紙も木の扉も先生の手作業できれいにしました。


のぼる子ども多数。下にはスギのウッドチップ。

ポスト


のぼるところ。宝物などをしまうところ。

ブランコ


ブランコを片付けるのは年長さんの証です。

こうさぎ・こりす


2歳児と満3歳児クラスのお部屋。