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2025-05-30

2025年度 6月の園長だより

「余白」に宿る学びの力 ~映画『おおかみこどもの雨と雪』とmarginaliaに寄せて~

アニメ映画『おおかみこどもの雨と雪』をご覧になった方も多いのではないでしょうか。こどもたちの成長と葛藤を、母親「花」の視点から描いた細田守監督の作品です。物語のラストで、山へ向かう「雨」に「まだ、あなたに何もしてあげてない…まだ、なにも…」「しっかり生きて!」と語りかける「花」の言葉は、何度観ても胸を打ち、涙を誘います。この作品の感動をさらに深めているのが、美しい音楽の数々です。特に主題歌「おかあさんの唄」(作詞:細田守/作曲:高木正勝)は、作品の余韻を豊かに包み込み、静かに心に残ります。私はこの映画をきっかけに、高木正勝さんの音楽に魅了され、他の作品にも耳を傾けるようになりました。なかでも「marginalia(マージナリア)」というシリーズに心惹かれました。このシリーズは約200曲におよび、鳥の声、川のせせらぎ、蝉や虫の声など、自然の音を背景に、穏やかなピアノの旋律が重なる作品群です。私は特に「marginalia #115」と「marginalia #176」が好きで、聴くたびに不思議と心が癒される感覚に包まれます。

“marginalia”とは、本の余白に書かれた注釈や覚え書きのことを指します。ノートの片隅に何気なく書かれたメモや落書きも含まれます。一見、意味のないように見えるそれらの書き込みが、時を経て「意図せず生まれた価値ある記録」として評価されることがあります。この「余白」の概念は、こどもたちの健やかな育ちとも深く結びついています。特に自然保育の場では、こどもが自然の中で自由に遊び、感じ、学ぶ時間が大切にされています。そこには、あらかじめ定められたカリキュラムや成果を追うだけの学びとは異なる、「ただそこにある時間と空間」が存在します。たとえば、森の中でじっと沢ガニの動きを見つめる時間。びしょ濡れになりながら川をせき止めようと何度も試行錯誤する時間。それらは一見すると脇道に思えるかもしれませんが、実は深い観察力や創造性、仲間との関係性を育むかけがえのない時間なのです。それはまさに、学びの“余白”に生まれるmarginaliaのような存在だと言えるのかもしれません。

大人が「学び」として見落としがちな、こどもたちの小さなつぶやきや気づき――自然保育では、そうした瞬間を丁寧に拾い上げ、価値あるものとして尊重します。それは、何気ない書き込みがやがて意味を持つmarginaliaとなるように、日々の遊びや発見が、こども自身の「生きる力」として蓄えられていくプロセスなのです。私たち大人にできることは、こどもが自由に“余白”を使える環境を整えること。そして、そこに書かれるかもしれないmarginaliaを急かさず、静かに待ち、耳を傾けることではないでしょうか。健やかに育つとは、ただ真っすぐに成長することではありません。脇道や迷い道にも意味があると知ること。そのすべてが、その子らしさとして積み重なっていくのだと思います。

こどもたちが真に求めているものは、すぐには分からないかもしれません。それでも私たちは、こどもの伴走者として、その答えを探し続ける努力を重ねていきたいと思います。そして、私たちのすべての言動を通して、こども達に「あなたの味方だよ」と伝え続けていきたいと願っています。いつか、自分自身の世界を見つけて歩み出すこどもたちに――「しっかり生きて」と心から送り出せるように。     (園長)

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職員室


教材が置いてあります。

りす


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預かり保育、礼拝、健康体操など多目的に使います。

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お庭


5月にはグミの実が、夏から秋にかけて野イチゴが採れます。

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4・5歳児の縦割りクラスです。

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壁紙も木の扉も先生の手作業できれいにしました。


のぼる子ども多数。下にはスギのウッドチップ。

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こうさぎ・こりす


2歳児と満3歳児クラスのお部屋。