2023年度 5月の園長だより
「自分の手でとったもの」
今年は砂場の藤が見事に花を咲かせました。これで最後だよ、と言わんばかりに。
50年以上前に園舎が建ってから、随分長い間こども達を守ってくれました。木のほとんどの部分は枯れているのに、こんなにたくさん花をつけるなんて‥ちょっぴり切なくなってしまいました。でも、たくさん花をつけたので、たくさん砂場に花が落ちて、こども達の砂のお料理に使われていました。楽しそうに遊ぶこども達の様子を見て、藤も喜んでくれているかな‥なんて思いました。
こども達は花を使うことが大好きです。砂場遊びに使ったり、ビニール袋に水を入れて色水を作ったり、水に浮かべてお部屋に飾ったり‥。青梅幼稚園の園庭では、お花は必要な分だけ感謝して取っていいことにしています。これは、ウレシパモシリ(自然保育コーディネーター)のケロちゃん(ウレシパモシリ代表)のアドバイスで、2018年からそのようにしています。「咲いてるお花はとっちゃダメ」をルールとしてきた私にとっては衝撃でした。正直、心配な面もありましたけれども、こども達が取り過ぎて花が無くなったことはこれまで一度もありません。こども達のバランス感覚と、次々と新しい花びらを用意してくれる花の生命力には本当に驚かされます!そして、こども達はどの場所に何色のどんな花があるかをよく知っています。これは、自分の欲しいお花を自分の手に取ることができる、ということが影響していると思います。もし、「とっちゃダメ」の環境だったらどこに何が咲いていようが、直接こどもが関係を持ちづらいですから、花への興味関心は薄くなってしまうのかもしれません。誰かにもらったお花よりも、自分の手で取ったお花をすごく大切にする姿はよく見かける光景です。自分の手に取ることができるってすごいことなんだな、と改めて思いました。
先日、若草公園でウレシパモシリの方々と自然保育をおこなってきました。前日がとても寒い日だったせいか、期待されていた虫はほとんどいませんでした。そのため、さほど珍しくもないアリ、ダンゴムシに注目が集まり、必死で探す様子がありました。そんな中、「これね、わたしが見つけたの!」手の中には死んだ羽のついた虫が一匹‥。でも、その子はとっても嬉しそうで、大事にその死んでしまった虫を手にしていたそうです。自分で見つけて自分の手に取ったものは、こんなにも大切にされるんだ、ということを改めて知り、「心が動く」ということは「自分が動く」ということなんだね、と保育後の振り返りの中で先生たちと共有することができました。
5月は一年の中で一番お花が咲き乱れる時です。グミの実は…どうでしょう。去年はたくさん実をつけました。カタツムリもダンゴムシもテントウムシも、みんなにはしっかりと、その手に取って欲しいと思います。そして、大切な思い出として心に残していってほしいと思います。9月には園舎建替えのため、取り壊しの工事が始まる予定です。あと4か月。私も自分の手に取って、心を動かしながら、こども達と日々を過ごしたいと思います。
(園長 横山 牧人)