2017年度4月の園長便り②
今年度の給食試食会が終わりました。お母さん達に「食事の方はいかがですか?苦手なものなどありますか?」と質問すると大抵の場合「好きなものはいいのだが、嫌いなものは絶対食べない」「野菜が嫌いで…」「お弁当はいいのですが、給食は食べないんじゃないかな…」などなどマイナスの心配事の方が多いようです。
食事は毎日の事でもありますし、心配の種になりやすいですよね。食に関しては様々な本が出版されていますが、私は室田洋子先生の「たべない食欲のない子のなぜ」という本が大好きで折々に触れて読み返してきました。今回はこの本から少し抜粋して食事の事を考えてみたいと思います。
「乳児期後期から幼児期初期の食事に関する課題は味わう経験の試みというものではないかと思うのです。一定時間に一定量の食べ物を呑みこませて子どもに栄養をつけることはこの時期の最も重要な課題ではないのです。ひとくち、ひとさじ、ひとなめ、ひと香り。それでよいのです。」(本より抜粋)
用意されたものは残さず食べさせなければならないもの、と決めて食事中子どもに向き合うことほどつらいものはありません。楽しく食事をするには人と人との間で展開される関係を楽しむことが大切です。見た事もない食材を前に子どもがひとくち食べてみる。「すごい!」と周りの大人は喜ぶ。けれども、それ以降「妙な味だな…」と戸惑っていたところに「ママもほしいな、これちょうだい」とぱくっと食べてしまう。「あ!ぼくが食べようと思ってたのに」。子どもの自尊心を傷つけないこのような関係性。子どもにとって自分の行動が尊重されて、食べる経験も広げられていく時、食べることはすごく楽しいことだという実感を得ます。子どもにひきずられるのでもなく、親や先生が支配するのでもない、ちょうど釣り合いのとれた自然でお互いが尊重された関係性が日常の中にあるかが、問われるのであり、食べないことに焦って結果を急ぐがゆえに子どもとの関係性を崩してはならないのだと思います。焦らずゆっくりゆっくり食事の時も共に食す関係性を楽しむ事が食に対しての意欲を育てることになるのではないかと思っています。
給食試食会のあと、改めて本を読み返し、こんなことに思いを巡らせました。
(園長 横山 牧人)