くやま小児科便り6月「自費ワクチンを考える」
◆自費ワクチンを考える
~必要性は?優先順位をつけるとしたら?
当院では6月からロタワクチンを開始いたします。現在自費でできるワクチンは、B型肝炎、おたふくかぜ、水痘、ロタ胃腸炎、A型肝炎(今のところは渡航者が主な対象、0歳から可能)があります。
種類が多く、接種や優先順位を迷う方も多いと思いますので、ご説明します。
<世界的には定期接種のワクチンです>
日本の自費ワクチンは、世界のほとんどの国では定期接種(法に基づく公費接種)になっています。どれも予防の重要性に変わりはないのですが、我が国では過去に、副反応に対する世論が厳しく、裁判で国の敗訴が続いてワクチン行政が大きく後退した時期があり、今でも遅れているのが現状です。
しかし近年、ワクチンが導入されないことによって亡くなった子どもたちの家族、重症化で後遺症を残したり、命を落とす現実を知っている医療現場の人たちの声が高まり、ワクチンの重要性が認識されるようになってきました。
新型インフルエンザの流行で国民がこぞってワクチンを受けたことも記憶に新しいですし、最近では過去にワクチン接種できなかった年代の男性に風疹が広がり、社会問題になるなど、メリット、デメリットのバランスで評価されるようになりました。
こうした背景を受けて、厚生労働省では、近い将来に現在の自費ワクチンを定期接種にする検討が進んでいます。
(ブログ補足)
※予防接種制度の見直しについて(第二次提言)平成24年5月23日
厚労省 厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会
「医学的・科学的観点からは、7ワクチン(子宮頸がん予防、ヒブ、小児用肺炎球菌、水痘、おたふくかぜ、成人用肺炎球菌、B型肝炎)について、広く接種を促進していくことが望ましい。」
→このうち子宮頸がん予防、ヒブ、小児用肺炎球菌は平成25年4月に定期接種となりました。ロタは新しいワクチンであり、この中にはまだ入っていません。
<どれを優先したらいいの?>
自費ワクチンも世界標準では重要性は同じ、とはいっても、全て接種するとまとまった金額になりますし、お子さんが多いと、さらに悩ましい問題です。
優先順位をつける場合の判断材料がほしい方のために、ここでは当院の考え方をお示しします。
ただし、医療機関や専門家のあいだでは意見の一致がなく、あくまで参考ということをご了解下さい。
<0歳時>
この時期は、当院では疾患の深刻度からB型肝炎をお勧めします。ロタワクチンの有効性は期間限定であり重症化の頻度もそれほど高くありません。
かかる頻度でロタを選ばれる場合も、他の重要な定期接種が遅れないよう、是非同時接種で受けてください。
<1歳時>
おたふく、水痘は重要性は同じくらいで、両方2回接種が最もお勧めです。地域で流行している方をまず受ける、両方1回ずつ受けるという考え方もあるでしょう。いずれの場合も1歳になったらすぐ、MRと同時で受けましょう。
なお、ロタ以外は、乳幼児期以降何歳でも接種は可能です。(もちろん早い方がよいです)
以下の解説も判断材料としてください。
★B型肝炎:肝硬変や肝癌に移行することがある
小児がかかると慢性の感染になりやすく、成人してから多くは肝炎になり、やがて肝硬変や肝癌に移行します。日本の感染者は150万人、年間1万人程度が死亡します。
感染経路は血液や体液で、母子感染や水平感染(性交渉や注射器の共用等以外にも不明なケースもあります)で感染します。日本人も渡航機会の多い中国・東南アジア・インドは流行地です。
★おたふくかぜ:難聴、不妊、髄膜炎
原因がはっきりしない難聴の多くはこれによると推測され、かかった人の数百人に1人とも言われ、治りません。十分免疫をつけるために2回接種をお勧めしますが、1回でもある程度有効です。
★水痘:帯状疱疹
水痘にかかるとウィルスは一生神経に潜むので、免疫が落ちる高齢になると3~4人に1人は帯状疱疹という局所再感染を起こします。頑固で治りにくい痛みの原因になります。おたふくかぜ同様2回接種がお勧めです。
★ロタ胃腸炎:脱水、けいれん、脳炎・脳症
ロタウィルスは2歳までに100%かかります。一生に何回もかかりますが、乳幼児の初感染時には、熱や嘔吐や下痢で脱水をおこしたり、まれにけいれんや脳炎・脳症を起こすことがあります。