健康体育~「脳の可塑性」を生かした運動遊び⑥
「脳の可塑性を生かした運動遊び」⑥
「限界を超える子どもたち」(アナット・バニエル著)から子ども自身の力を引き出すたための9つの大事なことの5つ目~「内なる熱狂」
「熱狂」というとちょっと違和感があるかもしれませんが、「子どもの小さな変化に気づき驚いたり感動したりすること」を「熱狂enthúsiasm」と著者は表現しています。
大人が子どもの小さな変化に気づき心を熱くすると、子どもの脳は「その小さな変化を受け止め、脳の中で起きている活動(背景のノイズ)と差異化(※違いを表面に浮き上がらせること)します。」「子どもの脳が新しい力を獲得するためには、そのような小さな差異化が大量に必要だということです。」「子どもは新しいことをするととても興奮し、自分の脳の注意を呼び覚まします。」(「限界を超える子どもたち」p152、※北洞注・下線北洞)
人から人に感情が伝わる(共感)ことは、近年「ミラーニューロン」という理論で証明されつつあります。ミラーニューロンとは、「霊長類などの高等動物の脳内で、自ら行動する時と、他の個体が行動するのを見ている状態の、両方で活動電位を発生させる神経細胞である。他の個体の行動を見て、まるで自身が同じ行動をとっているかのように”鏡”のような反応をすることから名付けられた。他人がしていることを見て、我がことのように感じる共感(エンパシー)能力を司っていると考えられている。」(Wikipedia)
「あなたが心を熱くすることが子どもの脳に影響を与え」(前掲書p152)ます。子どものじつに小さな変化や進歩にあなたが感激し、心の内で喜びを深める力を磨くこと」(前掲書p150)が大切です。ただし、「感激すること、熱狂することをいわゆる『正の強化』と混同しないこと」(前掲書p156)です。大袈裟に褒めることを繰り返すと、子どもはだんだん褒められるために行動するようになります。また「子どもの脳は周囲の人びとの落胆や失望、無力感、無関心といった感情も鏡のように写しと」(前掲書p151)りますから、子どもには全てが筒抜けということですね^^;。騒がしいご時世でも大人はしっかりと心を平静に保たないといけません。これは大人自身の精神衛生にとっても大事なことですね。
私自身の経験ですが、褒めることがいいことだと思って、何かできるたびに子ども達を大袈裟に褒めていた時期がありました。その行為に対して、自分自身何か違和感を感じていました。そのうちに、子どもたちは決して大袈裟に褒め欲しい訳ではなく、自分がやっているところをちゃんと見てほしい、認めて欲しいだけだとわかりました。それがわかってからは、こっちはちゃんと見てるよという合図を送れば、子どもは満足してくれると言うことがわかりました。それに加えて、子ども達が失敗したり、転んで怪我をしそうになったりした時に、こちらが大袈裟に驚いたり、責めたりすることは、返って子ども達を驚かしたり恐れさせたりすることもわかってきました。そこから失敗したり怪我をしそうになったりする時ほど、大人が冷静に対処する必要性を学びました。そこで大人が慌てふためいたり、責めたりすると、子ども達は恐れて自分を責めるようになり、何もしない方が失敗しないので、結果的に消極的になることを学んでしまいます。
子どもは失敗をしながら学んでいきます。失敗することがいけないことではなく、子どもたちが安心して失敗して学べるように、大人が環境を整えてあげることが大切だと思います。
限界を超える子どもたち
脳・身体・障害への新たなアプローチ
アナット・バニエル 著伊藤夏子 訳瀬戸典子 訳
出版社: 太郎次郎社エディタス
健康体操講師 北洞誠一先生より
ご投稿いただきました