2024年度 3月の園長だより
「安心な空間から生まれるお友達」
今年度も卒園の季節がやってきました。今年の年長さんたちは、旧園舎から始まって、仮園舎~新園舎へと保育の環境を変えながら大きくなってきました。施設形態も幼稚園から認定こども園へ移行しましたので、まさに変化に対応しながら大きくなってきた、と言えると思います。そんな年長さん達と、どんな卒園式を作っていくか話し合いをしました。印象に残っている出来事を聞くと、お泊り保育、森あそび、ポニー牧場、新園舎ペンキ塗り、鬼ごっこ等々、たくさんの面白かったと感じた思い出を話してくれました。話をしながらお友達の方を見て笑いあったりする姿は本当にかわいらしく、友達っていいなぁ、と思いました。この一年間、環境の変化を生活に取り入れつつ、友達との関わりからも多くの学びを得られたことが感じられ、とても嬉しく思いました。
この先、小学校、中学校と大きくなっていく中でも「卒業」を迎える頃は友達がクローズアップされることがあると思います。では、友達はどうやって形成されていくのでしょうか。いくつかの論文を参照しつつ、私の経験則から考えてみました。友達の形成に必要なものとして先ず、「安心な空間」が挙げられると思います。「居場所」、とも言い換えることができると思いますが、担任の先生が作るクラスの雰囲気はとても重要です。この目に見えないクラスの雰囲気が「安心」ではなく「不安」であったとしたら、友達を作ることはとても難しい作業になるのではないでしょうか。次に挙げられるものとして、「遊びを通じた共通体験」があると思います。一人の子が森遊びで見つけた木の枝やカニが宝物になると、周りの子も同じようにお気に入りを見つけて一緒に遊ぶきっかけになる姿はよく見られます。また、お泊り保育のように「ちょっと特別な同じ体験」を通して仲間意識が高まることもあると思います。最後に、感情体験が挙げられます。喜怒哀楽の中でも特に「面白い」(ふざけ行動も含む)と感じる体験がこども同士を結び付けていくこともよく見る光景です。面白い場所にこども達は集まってきますが、面白いと感じるポイントは意外と千差万別です。「類は友を呼ぶ」の言葉通り、精神的なつながりによって「お友達」になっていくのではないかな、と思います。
このように、保育環境を整えながら、どの子もお友達と遊べるように配慮をしておりますが、様々な性格の子がいる中で、お友達と関わることに積極的ではない子、引っ込み思案な子もいます。そのようなこども達は「恐れ」を敏感に感じているようです。一人遊びもコンピテンス(様々な能力)を育てることはできますし、「空想の友達」を持っている子は他者感がポジティブで親密性が高いということも実証されているので、一人でいることが決して悪いことではありません。ただ、年が上にいくほど、共同的な活動への移行が求められてくるので、「恐れ」の軽減は図られるべきなのかな、とも思います。そこで必要になってくるのが、やはり「安心な空間」ではないでしょうか。これを得るには家庭外の大人との関わりがとても重要で、安心基地を提供してくれる保育者との関係性によって「恐れ」は軽減されていきます。愛情を伴った適度な見守りにより、こども達は自らその小さな足で一歩踏み出していきます。ただ、動き出そうとする前に大人が過干渉になると、自力で困難を克服する機会を奪ってしまい、「恐れ」をコントロールする力が育たなくなってしまいますので注意が必要です。こどもの成長を信じる愛情の目に後押しされて、自己選択・自己決定の先に友達を1人でも得られたら、こんなに素敵なことはないと思います。
2月に入って、登園の際にお友達を門のところで待つ年長さん達の姿をよく見るようになりました。本当に好きなんですね。成長の過程において、一緒に様々なことを学んできた仲間たち。かけがえのない存在であることは間違いありません。そしてわたしたちは、みんなにとっていつまでも「安心な空間」でいたいと思います。もし、思い悩むことがあったらお話を聞かせてください。大したことは何も言えませんが、「大好きだよ」ということは伝えられると思います。残りわずかとなった年長さん達との生活を心に刻みながら大切に過ごしていきたいと思います。
(園長)