2024年度 7月の園長だより
「育ちあうということ」
6月11日の森遊びで、通算100回目を迎えました。2018年5月29日から始めて6年が経過しましたが、回を重ねるごとに、こども達も保育者も共に成長してきたことを思います。始めの頃は、森へ行く準備にあれもこれもになっていましたが、最近はしっかり今のこども達の様子を踏まえた準備ができるようになってきました。こども達の様子も、森の中で様々な「発見」をすることによって、小さなものにも「気づくちから」がついてきていると思います。そんなこども達と日常の中でお散歩へでかけると、次から次へといろんなものを見つけるので「大冒険」のようになる時もあります。
感性を豊かに育てる目的をもって森遊びを始めましたが、目的達成のために大切にしてきたことがあります。それは、「感動を分かち合う」ということです。
『生まれつきそなわっているこどもの「センス・オブ・ワンダー」をいつも新鮮に保ち続けるには、私たちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などをこどもと一緒に再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる必要があります。(センス・オブ・ワンダーより)』
この言葉の通り、こどもが何か見つけて驚いたり、喜んだりしている時「本当だ!すごいね」と保育者が共感してあげることにより、こどもの感性は豊かになっていくのだと思います。そんな保育者の姿をよく見ているこども達はお友達の発見にも素直に驚いたり、一緒にもっと見つけようとしたりする姿があります。
年少さんの男の子が、ブロックでロケットを作っていると、他の子が「わぁ、ぼくもロケット好きなんだ。一緒にあそぼう」という姿がありました。あたりまえのことのように思えますが、そこに至るまでの背景に共感してもらえた経験や自分も認められた経験があるからこその姿なんだと思います。また、日常の中で小さな争いは起こるものです。順番がどーのこーの、浮き輪、水中たこメガネを貸してくれない…、などなど。でも、結果大きな争いには発展しない場合がほとんどです。「貸して」「いやだ」のやり取りを何回か繰り返した結果、貸してくれないことがわかると、違う場所へ行って違う遊びをして、しばらくしてまた「貸して」とやってくる。そこで貸してくれた場合もあったし、まだ駄目だった場合もありました。「○○ちゃんが使いたいのわかるけどさぁ、僕も使いたい!」という子のそばで「そうだよねぇ。」と一緒にいる先生。しばらくして、「あとで返してね」と貸してくれました。そして、確かにあとで返すことができていました。こんなやりとりを見ながら、こども一人ひとりがそれぞれに成長しているように感じました。
こどもは仲間と一緒に育ちあうものです。児童精神科医の佐々木正美先生が著書の中で述べられておりますが、もし、自分のこどもだけうまく育てばいいと思い、「みんなに負けないようにしなさい!」と叱咤激励を繰り返していると、優越感・劣等感の強い子になってしまうそうです。優越感は人を見下げたり軽蔑したりする怖い感情です。そして、自分より能力のある人には敵意や嫌悪感、嫉妬を感じるようになったり、逆に劣等感を怖れるあまり、媚びへつらったりするようになるそうです。ですから、「育つ」ということは「お互いに育ちあっていく」ことが大切になってきます。そのためにも、先ず、保育者がこども達の感動に共感し、こども達が仲間とともに育ちあう環境をこれからも築いていきたいと思います。 (園長)