2022年度 11月の園長だより
「新時代を生きるちから」
先日、年中・年長さん達で玉入れを遊びの中でおこなったそうです。その時、「紅組」「白組」に分かれて勝負するのではなく、みんな一緒におこない、どれだけ多く入るかを楽しんだ、とのことでした。これはこども達の方から「対決するより協力したい」という提案があり、みんなで話し合った結果このように決まったそうです。3回戦おこない1回目よりも2回目、2回目よりも3回目、と玉を多く入れることができ、少し前の自分に勝つ!という姿勢が微笑ましく、玉入れも大盛り上がりでした!と担任から報告を受けました。玉入れの後、「やっぱり勝負したかった…」というお友達もいて、この件についても話し合った結果、「じゃぁ、今度違うゲーム等で勝負しよう!」、ということになったそうです。私はこの一連の報告を聞いて、「すごい!!」と感心してしまいました。
幼稚園教育要領の総則に「幼稚園教育において育みたい資質・能力」として、
①知識及び技能の基礎
②思考力・判断力・表現力の基礎
③学びに向かう力・人間性、
の3点が記載されています。…と言われてもあまりピンとは来ませんよね。いろいろ解説を読まないと内容は理解が難しいと思いますが、先述の玉入れの事例に関わってくるので、なんとか簡単に説明を試みたいと思います。
「幼稚園教育において育みたい資質・能力」はOECDが21世紀に生きる人間に必要な知性として提案してきた「キーコンピテンシー」という概念につながっているそうです。つまり…
① 言葉やテクノロジーを相互作用的に活用する力
② 人間関係を上手に柔軟に築く力(対立を激化させず、一致点を粘り強く探り、お互いが納得して協調する力)
③ 大きな視野、長い見通しの中で、物事を考えて判断する力
この3点がこれからの時代を生きる上で必要な力と言われているようです。翻って玉入れの事例を思い起こしてみると、どうでしょう。かなりの部分、これらの力を使いながら活動を進めてきたことに気づくことができると思います。そして、もう一つ玉入れの活動で着目したいのは「過去の自分に勝つ」というところです。比べる対象が他人ではなく自分であるということはこども達にとって一番納得のいく形なのではないか、と思っています(勝負ゲームを否定するものではありません)。今、まさに人生の基礎となる「自分」の核(コア)を作り、一日一日大きな成長を遂げているこども達です。こども達の内側から出る思いを大切にしてあげたい、と改めて思いました。日本は「自己責任論」が広まってしまい、失敗を極度に恐れるようになってしまった、との論評がありました。少しの失敗をも避け、周りの目を過度に気にし、成功する確率の高い選択肢を選び続けた結果、自分の行動の決定権を他人に渡し、「自分」がなくなってしまった…と書かれてありました。こども達には、まさに人生の土台を作るこの幼児期に、失敗を何回も繰り返しながらも、自分が認められる経験を積み重ねていってほしいと願っています。
運動会が近づき、年長さん達はいろいろなことにチャレンジしています。今年も様々なドラマがありますが、こどもが自ら「やらない」と決めたことを認め、「やる」と決めたことを私たちは最大限応援してあげたいと思います。
そして、この運動会の取り組みはもちろん、日々の保育を通じて「自分」という存在をより確かなものにしていってほしいと願っています。自分一人だけ良ければいいのではない、この仲間たちと共にいるからこそ、大きな喜びがあることを感じることができますように。そして、大切なこども達が新しい時代に生きる力を育んで行くことができますように。
皆様と一緒に、こども達を応援していきたいと思います。
(園長 横山 牧人)