2021年度 01月の園長便り
「共に生きる」
明けましておめでとうございます。
年明けは様々な方々から年賀状をいただきました。在園性や卒園生をはじめ、皆さん近況が綴られていて、楽しく拝見させていただきました。また、あまがさすの森を中心とした関わりのある方々からも多くいただき、豊かな人とのつながりをありがたく思いました。
先日、ラジオで「コモン(common)」について注目が集まっているというお話を聞きました。ここでいうコモンとは共有の財産のことで、例えば「里山」のようなイメージのことです。トピックのポイントは…
- 木々も、果樹も、川の水も、村の財産だからこそ村全体で協力し、支え合いながら管理してきた歴史があった。
- しかし次第に行政が管理するようになり、民間企業も管理してくれるようになった。いつの間にか、コモンは他者が管理するもの、それが当たり前になってしまった。
- 生活に必要な食料・交通・エネルギー等のインフラは一見、整備されてきたかのように見えるが、経済を優先するあまり人は離れ、地域はバラバラになってしまった。このような現状を受けて、もう一度コモンを地域住民の手に取り戻そうという活動が各地で増えている。
という内容でした。私は、なるほど素晴らしい!と思いましたが、一方で、下手に手を出したくない、と考える人も多く、
- いかに「自分を解放していけるか」が課題。
とも聞きました。
確かに、下手はしたくない‥プライベートな時間は確保したい…と思うのは当然です。ただ、それを放置してしまうと、豊かな地域での生活から離れていってしまうのだとしたら、どうしたらいいのでしょうか。コモンの領域とプライベートの領域をバランス良く広げていけたら良いと思うのですが…。
河合隼雄氏の著書「臨床教育学入門」の中に「誤りを楽しむ」という項目があります。授業中の質問に対する生徒の答え方について日本とアメリカの違いを分析し次のように述べています。
- 日本人は間違ったことを言って「恥をかく」よりは「知らない」という方がましだと感じている。
- 自分はだめ、と思っている子はできるだけ沈黙を守ろうとするし、いわゆる「できる子」のみが活躍する授業になる。そして、あきらめて沈黙している生徒たちにとって、授業が楽しいはずはない。
- 生きている授業をしようとするなら、誤答を生かすことを心がけなければならない。
こども達がのびのびと園生活を送るためには「安心して試行錯誤できる環境が必要だ」とはよく言われるところですが、河合氏の述べる「誤りを楽しむ」「誤答を生かす」といった部分はそれと通じるものがあると思いました。
確かに、こどもの遊びを見ていて面白いな、と思うところはトライ&エラーの先に新しい展開があるところです。「こうやってみよう!」と考えて試してみると、たくさん失敗をします。しかし、その行為に誰かが価値を認めてくれると、失敗が失敗でなくなります。遊びが自分の好きなことであれば何回も試したくなります。そしていつか成功する時が与えられます。が、夢中になればなるほど、周りに迷惑をかけることもあります。そこでお友達とぶつかって葛藤を体験することもあります。けれどもその分だけ自分の領域、他者の領域、コモンの領域を知る機会になると思います。
このような経験値を積み重ねていくことは、コモンの領域を広げること、つまり「地域に自分を開放すること」につながるのではないかと思います。さらに、青梅のコモンの一つに森林があります。青梅の共有財産である森林に私たち大人がつながって、大切にしていく姿をこども達に見せることも大事なことではないかと思っています。
幸せを感じる4つの因子(11月号掲載)をもう一度よく見てみると、人とのつながりがあってこそ得られるものばかりです。ですから、幸せで豊かな生活を送るためには他者と共に生きることが大前提にあると思います。青梅幼稚園の保育目標は創設以来ずっと「共に生き、共に育つ」ですから、年賀状を見ながら皆様と共に生きることを楽しんできた歴史を改めて想いました。そしてこれからも、プライベートの領域を大切にしつつ、コモンの領域を皆様と共に広げ充実したものにしていきたいと心を新たにしました。
今年も、どうぞよろしくお願いいたします。
(園長 横山 牧人)