クリスマスイヴを迎えて
今年も12月24日がやってきました。
今晩、サンタクロースが訪れる家庭も多いのではないでしょうか。
青梅幼稚園にもクリスマス祝会の終わりにサンタクロースはやってきました。窓越しに大きな袋を持って歩く姿が見えただけで、プレゼントを置いて行ってしまいましたが、こども達は大興奮でした。「本物のサンタさん見ちゃった」という子や、サンタさんを探しながら帰った子など様々でしたが、私はこのようなこどもの持つファンタジーの世界はできる限り守ってあげたいと思っています。
世界でもっとも有名な「社説」をご存知でしょうか?
1897年、9月21日 ニューヨーク・サン新聞に掲載されたものですが、ある8歳の女の子が新聞記者宛てに「サンタクロースっているんでしょうか?」という質問を送ります。それに対して答える形で社説が掲載されました。これが大反響を呼び、現在に至るまで読み継がれています。以下ご紹介いたします。
「こんにちは、しんぶんのおじさん。 わたしは八さいのおんなのこです。じつは、ともだちがサンタクロースはいないというのです。パパは、「サンしんぶんにといあわせてごらん。しんぶんしゃでサンタクロースがいるというなら、そりゃもう、たしかにいるんだろうよ」といいました。ですから、おねがいです。おしえてください。サンタクロースってほんとうに、いるのですか? ヴァージニア・オハンロン」
ヴァージニア、おこたえします。サンタクロースなんていないんだという、あなたのお友達はまちがっています。きっと、その子の心には、いまはやりの、なんでもうたがってかかる、“うたぐりやこんじょう”というものがしみこんでいるのでしょう。 うたぐりやは、目に見える物しか信じません。うたぐりやは、心のせまい人たちです。心がせまいために、よくわからないことが、たくさんあるのです。それなのに、自分のわからないことは、みんなうそだときめているのです。けれども、人間の心というものは、大人の場合でもこどもの場合でも、もともとたいそうちっぽけなものなんですよ。
でもね、ヴァージニア、大人でも子どもでも、ぜんぶがわかるわけじゃない。ぼくたちには、この世界のほんの少しのことしかわからないし、ほんとのことをぜんぶわかろうとするには、世の中のことすべてを理解し、すべてを知ることのできるような、大きな深いちえがひつようなのです。そうです、ヴァージニア、サンタクロースがいるということはけっしてうそではありません。この世の中に愛とか思いやりとかいたわりとかがちゃんとあるように、サンタクロースも確かにいるのです。あなたにもわかっているでしょう。世界に満ち溢れている愛やまごころにこそ、あなたの毎日の生活を、美しく、楽しくしているものだということを。
もしサンタクロースがいなかったら、この世の中はどんなにくらく、さびしいことでしょう!あなたのようなかわいらしいこどものいない世界が、考えられないのとおなじように、サンタクロースのいない世界なんて、そうぞうもできません。
サンタクロースがいなかったら、人生の苦しみをやわらげてくれる、こどもらしい信頼も、詩も、ロマンスも、なくなってしまうでしょうし、わたしたち人間のあじわうよろこびは、ただ目に見えるもの、手でさわれるもの、かんじるものだけになってしまうでしょう。また、こども時代に世界に満ち溢れている光も、きえてしまうことでしょう。
サンタクロースがいない、ですって!サンタクロースが信じられないというのは、妖精が信じられないのと同じです。ためしに、パパにたのんで探偵を雇って、クリスマスイブに、えんとつというえんとつぜんぶに、人を見はらせて、サンタクロースが来るかどうかたしかめてみてはどうでしょうか?しかし、たとい、サンタクロースが来なかったとしても、それがなんのしょうこになるのです?サンタクロースを見た人はいません。けれども、それは、サンタクロースがいないっていうしょうめいにはならないのです。この世界でいちばんたしかなこと、それは、こどもの目にも、大人の目にも、みえないものなのですから。
ヴァージニア、あなたは、妖精が原っぱであそんでいるところを見たことがありますか?もちろん、ないでしょう。だからといって、妖精なんて、ありもしないでたらめだなんてことにはなりません。世界でだれも見たことがない、見ることができないふしぎなことは、ほんとうのところは、だれにもわからないのです。あかちゃんのがらがらをぶんかいして、どうして音が出るのか、なかのしくみをしらべてみることはできます。けれども、ふしぎな世界には、どんな強い人でも、どんな強い人がたばになってかかっても、こじあけることのできないカーテンみたいなものがあるのです。ただ、信頼と想像力と詩と愛とロマンスだけが、そのカーテンをいっときひきのけて、まくのむこうの、たとえようもなくうつくしく、かがやかしいものを、みせてくれるのです。そのようにうつくしく、かがやかしいもの、それは人間のつくったでたらめでしょうか?いいえ、ヴァージニア、それほどたしかな、それほどかわらないものは、この世には、ほかにないのですよ。
サンタクロースはいないですって? とんでもない!うれしいことに、サンタクロースはちゃんといます。それどころか、いつまでもしなないでしょう。一千年のちまでも、何百年のちまでも、サンタクロースはこども達の心を、いまとかわらず、よろこばせてくれることでしょう。
世界中のすべてのこどもが幸せのうちにクリスマスを迎えることができますように。
メリークリスマス。
(園長)