2021年度06月の園長便り
「森の遊び」
「すべて こどものすることには、こどもなりの目的があることを念頭に置かなければならない」
「子どもが一生懸命になって何かしている時、大人の目から見ると、いったい何をやっているのかわからなかったり、まことにつまらないことをやっているように思えることが多い。それは何かする時の大人のつもりとこどものつもりとが互いに食い違っているからである。(中略)しかし、こどものしていることはこどもにとっては真剣な仕事であり、はっきりした目的を持っているのである。こどもにはこどもとしてのつもりがあり、目的がある。このこどもの心にある目的に沿って、こどもが自分の考えを発表するようにさせることが、こどもの心を成長させる道である。大げさに言えば計画的能力の発展であり、このような計画的能力こそ知的成長に最も大切な基礎である。」(保育要領 2.1 知的発達より)
「こども自身の中からわきおこってくる興味から出発した経験をさせるようにこどもと共に考えよう」
こどもは自分を動かすことによって、自分で活動することによって成長するものであることを考えれば、こども達の動きを引き出す原動力になる興味こそ、こどもを成長させる最も大切な要素である。」(保育要領 2.2 知的発達より)
先日みんなで「あまがさすの森」へ遊びに行ってきました。カニやヤゴ、カエル等、生き物を夢中で探したり、ただひたすらコップに沢の水を汲んでみたり、こども達の心を惹きつける遊びは様々だったと思います。帰り際に「沢の水を運びたい」年少さんの男の子がいました。大人に手伝ってもらって運んだ後、「何か捕まえたい…」。でも特に何も捕まえられないでいると、「葉っぱを浮かべたい」。でも、もう片付けの時間になってしまい、近くにいたお友達と葉っぱを浮かべた後「お水、ジャーしようか」と言うと「持って帰りたい…」。しばらく水に浮かぶ葉っぱを眺めた後、担任から「来週も来るからさ、お水流そうか」と言われると、気持ちを切り替えてお片付けを始めることができていました。また、ある年長さんの男の子たちは透明なゼリーのようなものを発見。「アメリカ ポイポイ」と名づけられたその謎の物体、こども達によると「カニを食べてしまう」とのこと。容器の中に一緒に入れられた沢ガニは食べられてしまうのか…‼なんともキラキラした目で観察していました。そこには決して残虐な思いは無く、ただただ未知な物に対しての興味があるだけだったと思います。実は「アメリカ ポイポイ」はスミレちゃんによると、トンボのたまご(幼虫は既に出て行った後なので抜け殻)ではないか、とのことで実際はカニがたまごの方を食べていたようなのです。いずれにせよ、こども達のワクワクした気持ちは先生たちにも伝わり、保育後の振り返りの時間も先生たち同士で話題になっていました。「アメリカ ポイポイ」というネーミングが絶妙な面白さを醸し出していますが、保護者の方が「アフリカ マイマイ」が由来しているのではないか、と教えてくださいました。なるほど、カタツムリの季節でもありますものね。自分たちの持っている知識とイマジネーションをフル動員して心と身体を動かすこども達の姿を目の当たりにして、興味から出発した経験そのものだな、と思い嬉しくなりました。
次に森へ行った時、こども達がどんな遊びを始めるのか楽しみです。あの時はこどもの行為の意味がわからなかったことも、次に行った時「あ、こういうことだったんだ」と気づくことができるかもしれません。大切なのは私たち大人が理解しようとする姿勢をなくさないことだと思っています。「大人が理解した分だけ、こどもは成長する」とも言われますから、いつもこども達の良き理解者と私たちがなれますように。そしてこども達の心を育てる保育を求めつつ、日々の生活を充実させていきたいと思います。
(園長 横山 牧人)