toggle
2020-07-01

2020年度7月の園長便り

「保育の出発点」

青梅幼稚園はキリスト教保育を主義としておりまして、毎週水曜日に礼拝をおこなっています。6月は「天地創造」 「アダムとイブ」「ノアのはこぶね」のお話をしました。「天地創造」では神さまが全てのものを創った後、それらを見て「極めて良かった」といったこと、つまり私たちは一人ひとり「極めて良いもの」なんだよ、というお話。「アダムとイブ」では蛇に誘惑されて禁断の果実を食べてしまう失楽園のお話。年長さん達にこのお話をした時、誰が一番悪いと思う?と質問すると、圧倒的に多かったのは「蛇」でした。けれど、「でも神さまは全てのものを極めて良いものとして創ったんじゃないの?蛇だってすごくいいものとして創られたはずだよね?」と聞くと「その蛇は失敗作なんじゃない?」「その蛇に毒があるなら、いいものじゃないよ」「せっかく自分で創った人間なんだから、追い出したりしたらもったいないって神様思うんじゃないかな…」等々、活発な議論の場となりました。実はアダムとイヴは失楽園の後、労働をし、こどもができ、家族を形成します。生活が始まったと言ってもいいかもしれません。その後、人が増え、村ができ、人としての活動に広がりを見せていくという話になります。このことを話すと「じゃぁ、悪いと思ったことも良かったのかもね」とつぶやいた子もいました。「ノアのはこぶね」では人間が増えると争いが絶えず、その様があまりにも酷いので神さまは大洪水を起こして人間を流してしまいます。正しい人だったノアさんの家族と動物たちは箱舟に乗っていたので助かったというお話。話終わった後、「悪いことをした人もいたかもしれないけど、ノアさんの他にもいい人はいたはず。それなのに…ひどいと思う」、と年長さんの女の子が熱く語ってくれました。なるほど。もっともですよね。

私たちは生きている中でどうしても許せないこと、どうしても受け入れられないこと、理解できないことは時として起こりえます。その時、誰かを責めたくなる気持ちもわからなくはないですが、私は人が人を裁くことには限界があると思っています。誰もが極めて良いものとして存在しているはずなのに、安易にあの人は悪い、この人は良い、とどうして決められるでしょう。しかし一方で、決定的に悪い行いをした人を、誰だって遽(にわか)に許す事はできません。しかし神はその人ですら「極めて良いもの」とするのか…私にはわからないのです。様々な考え方をもつ人達の中でトラブルになった時、多様性を受け入れることは簡単なことではありません。実際、他人の行いに対しての誹謗中傷に歯止めが効かないことが社会問題にもなっています。けれど、そんな今だからこそ、私たちはこども達に伝えるべきもの、示すべき姿勢があるのではないか、とも思っています。

教育の営みは文学、数学、体操を教えること以上に小さなこどもの存在を人間として立派な社会人に形成することを基礎としています。実際、教育基本法第1条に「教育の目的は人格の完成」とあります。では、人間形成、人格の基礎はどこで培われるでしょうか。それは生活の場において養われます。生活の中でこども達(未熟者)は大人(経験者)を見て、真似をしながら学んでいきます。ですから私たち保育者はこども達との共同の生活を創造し、私たちの背中を見せながら、こども達が主体的に毎日を送れるように環境を整えていきたいと思っています。しかし共同生活の中とはいえ、こども達の思いはそれぞれバラバラなことが多いですから、様々な葛藤はあるのだと思います。その一つひとつの思いをどれだけ保育者が受け止めてあげられるか、その姿勢をどれだけ保育者の背中を通して示すことができるか…。そこが保育の肝だと思っています。こどもを大切に思う大人の気持ちは必ず伝わります。愛情を持つためには相手のことをよく理解する必要があります。その出発点として私たちはみんな「極めて良いもの」とされていることを心に留めておく必要があると思っています。

私たちがどんな時でも、こども達の良き理解者でいられますように。

(園長 横山 牧人)

©Seiji Fujishiro/HoriPro

関連記事

職員室


教材が置いてあります。

りす


3歳児クラスのお部屋。

フリールーム


預かり保育、礼拝、健康体操など多目的に使います。

うさぎ


3歳児クラスのお部屋。

お庭


5月にはグミの実が、夏から秋にかけて野イチゴが採れます。

きりん


4・5歳児の縦割りクラスです。

園長室


園長がお仕事をしています。

こひつじ


地域の親子が遊べるお部屋です。

ぱんだ


4・5歳児の縦割りクラスです。

こどもトイレ


壁紙も木の扉も先生の手作業できれいにしました。


のぼる子ども多数。下にはスギのウッドチップ。

ポスト


のぼるところ。宝物などをしまうところ。

ブランコ


ブランコを片付けるのは年長さんの証です。

こうさぎ・こりす


2歳児と満3歳児クラスのお部屋。