2019年度2月の園長便り
「こどもの切実な願い」
先日、ある会合で、いじめにあってしまった家庭のお話を聞きました。いじめはずいぶん前からあったそうなのですが、こどもは親になかなか言えず、やっと言い出せたと思ったら父親から激しく叱責されてしまった、とのことでした。
お父さんとしては強く育ってほしいという願いがあったそうなのですが…。では、その子がなぜ、親にいじめられていることを言えなかったのか、その理由を聞くと「親に迷惑をかけたくなかったから」と答えたそうです。これはよく聞く話ですよね。自分がつらい状況にあるにもかかわらず、家庭に問題を持ち込みたくないという健気なこどもの姿を思い、いたたまれない気持ちになりました。
約35年前、1984年に日本家庭科教育学会が「現代の子どもは家庭生活をどう見るか」という調査報告を出しています。それによれば、「子どもが大切と考える家庭の働きの順位」は小学校低学年 中学年 高学年のいずれにおいても男女の差に関わりなく1位:「みんなが楽しく過ごすところ」 2位:「こどもをよい人間に育てるところ」としています。35年前の調査ですが、こどもの家庭に対する願いは昔も今も変わらないのではないか、と思います。(育つ環境・社会はずいぶん変わったと思いますが…因みに1984年といえば私が小学5年生の頃です)つまり、こども達は心の深いところで、楽しい家庭の中でよい人間として育つことを、切実に願っているのではないかと思うのです。では、私たち大人はどのようにしたら、この願いに応えることができるのでしょうか。
これは小学校一年生の詩ですが、この詩に対して担任の先生は次のように言葉を添えています。
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「わたしは」ではなく「あゆみは」ってお話した通り書いています。かわいらしいですね。「よ」「よ」ってママにお話ししたくって、したくってたまらないのですね。あゆみちゃんのその気持ちがよくわかります。「一どだけ」ねぇ。「みせてあげたかったのに」ねぇ。あゆみちゃんってなんて、心のやさしい子でしょう。僕もあゆみちゃんのような女の子のパパになりたいです。うれしくて楽しくて、もうからだじゅうがワクワクしちゃっているのに、おばあちゃんのことを思っているんですもの。天国のおばあちゃんもうれしくて泣いていますよ」
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こどもの心をしっかりつかみ、理解しようとする先生の姿がよくわかると思います。知識・技術を教えるよりも先ず、感情的な部分に共感しようとするこのような姿勢がこども達を人間として育てるうえで本当に大切なことだと思います。
こども達の生活は家庭と幼稚園と両方ですから、「楽しい生活の中で、よい人間として育ちたい」というこども達の切実な願いを現実のものにしていきましょう。そのためにも一人ひとりの理解を深めていきたいと思います。
(園長 横山 牧人)